今週はめずらしく仕事で外出する機会が多い。
今日は品川プリンスホテルで行われた、WEBアクセシビリティ本「ここから始めるWEBアクセシビリティ」(著・濱田秀雄他)の出版記念講演会に行ってきた。
小さいとはいえ、いちおう一般ユーザーにWEBへのアクセスラインを提供する会社のサイト管理者としては、全盲や高齢などのユーザ側プロパティに左右されない情報アクセス環境を用意するという「WEBアクセシビリティ」の問題は、本来、常に考えておかなければならない事項である。
しかし、とくに普段から障害をお持ちの方や明治・大正生まれのお年寄りとお付き合いしているわけでもないため、具体的にどんな風に作るべきか感覚が今いち掴みづらいのが、つねづね理想と現実との乖離に悩むところでもある。
以前、関根千佳氏の著書「『誰でも社会』へ」を読んでて思ったことをこのblogにも書いたことがあったが、実はこの本に出てくる色々な障害者の中で、濱田英雄氏はとりわけ印象的なキャラクターの一人だった。両手両足の指を持たない元写植屋さんがWEBサイト作成をバリバリこなし、アクセシビリティに関する重要なスポークスマンとして活躍しているというのはそれだけで一種感動的な事実だが、ひょっとしたらこれからの時代「健常であることのイニシアティブに溺れた、精神年齢退行障害」とでもいうべき人々(石を投げれば当たるほどゴロゴロしている)なんぞより、ハンデと戦いながらも自分の精神とスキルを磨き上げてきた障害者たちの方がよっぽど活躍するようになるのかも知れない、と思わされもするところである。
今日はその濱田秀雄氏ご本人が講演をするわけなので、私的にはとっても楽しみだった。
果たして壇上に上がった濱田氏の腕には本来あるべき掌や指が無いまま先がそのままスーッと先すぼみになり、あたかも両腕がお箸のような状態になっている。これを「先天性両手足指欠損」というのだそうだ。
司会の方が壇上に上った濱田氏を紹介しながら「濱田に手を見せてもらいましょう、手を振ってくださーい」と声をかけると「はーい」という感じでお茶目っぽくそのような腕をくるくる振ってみせる、かなりのポジティブ障害者だ。
現在は経済産業省のアクセシビリティ指針作成部会(正式名はうんざりするほど長いので略)の主査をつとめているという。元写植屋さんだけあって視力も極端に悪いそうで「それに中卒であることも含めて、いろんなハンデを負っている人たちの気持ちは少しは理解できると思っています」と、並み居るNTTだのIBMだのの、いかにも高学歴な聴講者を相手に語る姿はある種ものすごくカッコいい。ナマの濱田氏を見ることができただけでもこの聴講は収穫だった。
障害者基本法にアクセシビリティ努力義務条項が設定され、それに従ってのJIS規格x8341(「やさしい」の語呂合わせらしい)が発表された現在となっては、本来もっともっとWEBアクセシビリティには注目が集まっていいはずである。
しかし何となくのイメージだけど、着用している名札にみる麗々しい企業名にも関わらず、参加している聴講者の人材的な層は薄いのではないかと感じた。
どこの大企業でもアクセシビリティ部門は設けているのだろうけど、アクセシビリティとかユニバーサルデザインの考え方は、そういう一部門に集約されるべき問題では本来ないはずである。にも関わらず、そうした限定的一部門に所属する人たちばかりがこの場に集まっているような印象が私にはどうも拭えなかった。
もしそうだとすれば、それはカネの匂いがしないところには「それ担当」しかよこさない、"企業"というモノのしょうがない習性だからだといえば分かった気にはなれるものの、私は少し反感を覚えてしまう。精神的左翼だからだろうか?
この分野、ある意味欧米社会にくらべて日本人の意識がまだまだ発展途上にある分野の代表的なひとつなのかもしれないと思った。
けっきょくは、米国における「リハビリテーション法508条」のような強制力が必要だという議論になってしまうのかもしれない。
いくら資本主義といっても、もう少し善意ある社会であってもいいような気がするんだがなぁ・・・。私が甘いだけなんですかね。
会社に戻ると、今度は二転三転する新サービス提供関連のブレストが待っていた....( >_< )
なんでこんなにとっかえひっかえなテーマで毎日悩んでるのだろう?ちょっとはWEBに専念できたらいいんだが、理想と現実の距離はここでも遠い。