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8月 08, 2015

「野火」(2015)(88点)塚本晋也監督

生々しいデジタル映像で、極彩色のジャングルの中を彷徨するゾンビ化した人間を捉える

大岡昇平の戦記文学の古典を再び映画化するにあたり、塚本晋也監督が意を注いだのはおそらく生々しさの追求だったのではないか。デジタル画質がもっている、何というか否応なくその場に居合わさせられるような言わば「むき出しの臨場感」のようなものと、登場人物たちの現代語的な言い回しによるやり取りは、いずれも事態をスクリーンの向こう側の安全圏に置いておかないための仕掛けなのだと思える。冒頭、3本のイモを持たされて部隊から野戦病院に追い払われ、病院からは強制退院させられ、部隊からは「何で戻ってきた」と再び病院に追い払われる兵隊の姿は、宙に浮いた業務を抱えて組織と組織の間を右往左往させられる会社員にも似ていよう。

もっとも、近しい感覚を受けるのはそこまでで、フィリピン戦線の兵士は現代の会社員などとは決定的に違っている。部隊に出頭するたびに上司に怒鳴られ殴り倒される、兵隊同士ではイモの強奪をし合い、指揮系統の崩壊後には、定かならぬ船出の噂をあてにして餓鬼の群れと成り果て密林を彷徨する他ないのである。恐らくは撤退路として認知されているジャングルの道の道端には、力尽き倒れ、腐り、ウジに湧かれて朽ち果てていく何百もの死者が折り重なっている。さらに密林を抜け、米軍の機関銃陣地の射程内を夜間に突破しようとするシーンでは、全編の中でも最も首の絞まる思いをさせられる。
誰が誰とも区別のつかない暗闇の中、目の前には他の兵隊の靴の裏らしき影しか見えない状況で匍匐前進する主人公の一人称目線の映像は、「プライベート・ライアン」をも超越した圧倒的な臨場感である。戦場でひとりの参加者に与えられる「視界」は本当にこのような狭くてわけの分からないものだったのだろう、と想像させられるのだ。その果てには、尊厳もなにもかなぐり捨て、狂気の向こう側に落ちてでも生きる道、恐るべき人間狩りと人肉食へむかう選択肢が待っている…。

私たちは「野火」でフィリピン戦線の極彩色の地獄を疑似的に追体験することができる。いかなる立場や主張の人であれ、この追体験は一度はしておくべきと言えるのではないか。

8月 04, 2015

2015年7月の読書まとめ

7月は何といってもトニー・ジャット「ヨーロッパ戦後史」にとどめをさす。該博な知識、横断的な論理構成、映画や大衆文化から視点を拾う際の趣味の良さなど、欧州の教養人における総合力の本領をみるような歴史書。下巻をいま読んでいるが楽しませてもらっています。

2015年7月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1607ページ
ナイス数:38ナイス

椿荘101号室 3(完) (マッグガーデンコミックス EDENシリーズ)椿荘101号室 3(完) (マッグガーデンコミックス EDENシリーズ)感想
主人公が「一切成長しない」ことにより話を続けられるタイプのシリーズ(主人公《以外》が成長するのはOK)であっただけに、3巻での結末は若干の強引さが感じられなくもなかった。やはりこの段階であれば、前進とも現状維持とも受け止められる形の結末になるのは致し方なしか。それはそれとして、この人の絵はけっこう好きなので楽しく読んだ。
読了日:7月30日 著者:ウラモトユウコ

ヘルプマン!!ヘルプマン!!感想
介護マンガのパイオニア的存在である「ヘルプマン!」だが、10巻くらいまで読んだあたりでそれ以上読んでいなかった。シリーズ27巻まであったのね。イブニングから週刊朝日に舞台を移したこの「介護蘇生編」1巻、表紙の「日本は胃ろう大国なんだよ」というパンチラインと、帯コメントが瀬戸内寂聴とイケダハヤトというコンビネーションの絶妙さに思わず手に取ってしまったがリアルなドラマ展開と胃ろうをめぐる構造の分かりやすい説明に感じ入った。
読了日:7月29日 著者:くさか里樹

ヨーロッパ戦後史 (上) 1945-1971ヨーロッパ戦後史 (上) 1945-1971感想
トニー・ジャットの大著「ヨーロッパ戦後史」の上巻をようやく読了。上下段組み573Pと長かったが、人口動態から政治経済、ポップカルチャー、当時よく大衆に見られていた映画まで分野を超えたヨーロッパ総合史がぎっしり詰まっており、2~3Pおきに付箋をつけたくなる充実ぶりで、楽しかった。上巻は終戦とともに起きた巨大な住民移動にはじまり、'68年プラハへのワルシャワ条約軍進攻により共産主義幻想が本格的に打ち砕かれるまでが語られる。個人的には「ドイツ問題」と、社会民主主義が支持を得た文脈などが特に興味深かった。
読了日:7月25日 著者:トニー・ジャット

プリンセス・トヨトミ (文春文庫)プリンセス・トヨトミ (文春文庫)感想
しばらく小説から離れてたのもあり万城目学を何か読んでみよう、と思い手に取った一冊。会計検査院の調査官3人と謎の法人、大阪の歴史を巡る奇想天外なストーリーで知られる本作だが、並行して進むもう一つのストーリー…これからは女の子として生きよう、と決めた一人の男子中学生の成長を描く青春小説的部分の方が面白い。と言うかトヨトミ話の方は何しろこんな構造を継いでいく動機が弱いし、ディティールがゆるすぎて閉口さえしたのだが、大阪の人が読むとまた違った受け止め方になるのだろうか。
読了日:7月5日 著者:万城目学

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