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5月 02, 2015

「夏をゆく人々」(80点)アリーチェ・ロルヴァケル監督

32歳カンヌグランプリ女流監督の、イタリアの土に根付く少女の物語

有楽町朝日ホールで開催されている「イタリア映画祭2015」で鑑賞。イタリアの女流監督アリーチェ・ロルヴァケルがカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したドラマ。
古代エトルリア人たちが暮らしていたという凄いド田舎で蜂蜜づくりを営むドイツ系の家族。毎日キンスキーみたいに目をむいて怒鳴りまくってるお父さんがトラックに四姉妹を乗せて養蜂場へ出発。しかし四姉妹の下2人はまだあまりにも幼く、「ギャー!」とか「キャー!」とか叫びながら走りまわっているばかりで、多くの労働は長女のジェルソミナ12歳の双肩にかかっている。
いや、強権的ですべてを支配しているように見えるお父さん自身も、実はかつて挫折した左翼運動の果てに新たなな共同体を求めて田舎に移り住んできた一介の社会不適合者であって、実はこの家族で一番しっかりしており皆に頼られているのはジェルソミナ12歳であるのだった。
都会的な全てのものを憎み対立する父のもとで、従順に皆をまとめているジェルソミナだが、ある日、モニカ・ベルッチが変なカツラつけてテレビ番組「ザ・ワンダーズ」のロケをやっているところに出くわす。ベルッチが司会をしているこの番組は、イタリア中のピュアな農産物をつくる農家にスポットをあてる番組。バカげた茶番と吐き捨てる父に隠れて、ジェルソミナは都会への憧れを託してこの番組にこっそり応募するのだった…。

いや~、とんでもなく地味な映画で、別にコメディ感などは全くないのだが、都会的存在に対するアンチテーゼとして田舎暮らしを営むお父さんの行動の一つ一つが、実はアンチテーゼというよりこの人は単に社会とズレてるのかもしれないと思わせるもので、なんというかそのズレ感がおかしみを誘う。テイストは違うんだけどジョン・アーヴィングの小説がもっている笑えないユーモア感に近いかもしれない。12歳の娘が喜ぶとマジで思って本物のフタコブラクダを連れてくるシーンなどは、縁もないイタリアの田舎の風景の中で落ち着き払ったラクダの風貌と、唖然として立ち尽くすジェルソミナの脇を、下の妹たちが「ギャー!パパありがとう!」とすり抜けてラクダの方に全力ダッシュする姿のかわいさに劇場が揺れたのだが、冷厳としたリアリズムでもなく、甘いファンタジーでもない淡々とした描写の中に笑えないユーモアを浮かべる手腕は確かに手練れのものだなあと感じた。

2015年4月の読書まとめ

プルタルコス英雄伝にかなり時間を費やした。今月頭一つ出て圧巻だったのは、やはり「黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実」だろう。犯罪実録ものというジャンル読みを超えて、人間の深淵と、日本という国の異貌に触れる読書体験。おすすめ。

2015年4月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2267ページ
ナイス数:70ナイス

金門島流離譚 (新潮文庫)金門島流離譚 (新潮文庫)感想
つい先日亡くなった冒険小説の大家への追悼の意味で読んだ。元商社マンの主人公がのっぴきならない理由から、中国でも台湾でもない棚上げ状態の土地である金門島に流れつき、国家のあわいともいうべき不明瞭な土地柄を生かした密貿易ビジネスを営んでいるが、過去の運命が容赦なく彼を捉え、国家と闇社会の絡む策謀と暗闘に引き摺り込んでいく…。何とも船戸作品らしき展開で楽しめたが、背景には台湾現代史上の数々の桎梏が横たわる。巻末に収められた高野秀行氏の解説とあわせて現代アジア情勢への知見も含まれたお得な一冊といえる。
読了日:4月29日 著者:船戸与一
タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)タルト・タタンの夢 (創元推理文庫)感想
下町の気取らないビストロ「パ・マル(悪くない)」を舞台としたミステリ連作。といっても、殺人や凶悪犯罪とは無縁の短編ばかりだ。舌の肥えたお客たちが持つ、日常の延長や遠い日の思い出に含まれたささやかな謎を、名物シェフが料理を使って解き明かすというもの。登場する料理やお菓子はどれも実においしそうに描かれるし、4人だけの従業員たちの関係も実に小気味よいものなので、まるで小説そのものが、つい通ってしまうビストロのような居心地のよさを醸し出している。多くの読者に好かれそうなシリーズで、自分も続編が読みたくなった。
読了日:4月27日 著者:近藤史恵
黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実 (ハヤカワ・ノンフィクション)黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実 (ハヤカワ・ノンフィクション)感想
本書を手に取るまで、ブラックマン事件と市橋達也事件の区別がついてなかった様な自分だが、本書には没入した。事件を巡り剥き出しの人格を露にする人々の全てが興味深い。心の底では外国人を軽蔑しているホステスクラブ経営者、自供を得られない事に囚われ進めない警察、そして何といっても、数奇としか言えない運命の被害者家族。彼らの前に現れる不正確な情報提供者や詐欺師らを超えて、犯人の肖像は異様である。日本社会に関する著者の客観的で的確な描写のおかげで、読者は新たに立ち現れる見た事のない「日本」の姿を目にする事になる。必読。
読了日:4月26日 著者:リチャードロイドパリー,RichardLloydParry
ナチスと精神分析官ナチスと精神分析官感想
ニュルンベルク裁判に出廷するナチスの高官たちを精神分析し、公判が維持できるようカウンセリングする使命を負った野心ある精神分析医。彼とゲーリングやルドルフ・ヘスら第三帝国の高官らとの類例ない対話と、その後数奇な巡り合わせによりゲーリングと同じ青酸カリ服毒により自死するこの医師の後半生を描いたノンフィクション。高官たちのロールシャッハテスト結果などあり面白いが読後ドンヨリした気分になるので要注意w ヘスの記憶喪失を問い詰めるゲーリングが、ヘスより自分の自己顕示欲が前面に出しちゃうなど、ブラックに笑える箇所も。
読了日:4月21日 著者:
プルタルコス英雄伝〈上〉 (ちくま学芸文庫)プルタルコス英雄伝〈上〉 (ちくま学芸文庫)感想
上巻はギリシアの英雄たち。…が正直「どこが英雄だよ!」という逸話満載。名望を求めて暴走、嫉妬にかられた大衆の欲望を操り政敵を陶片追放しまくる。キケロ伝でも思ったが、古代世界には「虚栄心ダセえ」という観念はなかったのか?スパルタは狂気のファシズム、アテネは超衆愚政治の国に見える。テミストクレスはアテネが対ペルシア同盟を率いるための秘策として「他のギリシャ同盟艦隊を燃やしてアテネを頼らざるを得なくしよう」と提案するクズっぷり、最早笑う。聖人君子伝ばかり読まされるより人間的で良いとも言えるか?実際面白かったしw
読了日:4月18日 著者:プルタルコス
重版出来! 5 (ビッグコミックス)重版出来! 5 (ビッグコミックス)感想
相変わらずの素晴らしさ。驚愕のラスト1ページに震撼させられる「美の巨人たち」もさることながら、とても率直な書物愛に心ほどかされる「右側に気を付けろ!」が好きなエピソードだった。
読了日:4月11日 著者:松田奈緒子

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4月 29, 2015

「愛して飲んで歌って」(82点)アラン・レネ監督

難解ではない。しかし、とにかく異様。舞台劇のようなものと思っても、割り切れない不可思議演出にハマらざるを得ない一本

レネの映画はこれまでずっと敬遠していて、遺作となったこの映画がはじめての鑑賞。GW1日めの休日午前に新宿に出たら目当ての映画がことごとく満席でたまたま時間が合ったというだけの理由で観たのだけど、こういう巡り合わせで面白い映画に出会えた時というのは事のほか嬉しくなるもの、という経験則を上書きする鑑賞になった。
なにしろ、あの晦渋きわまる小説家ロブ=グリエの脚本による映画で最も有名なレネ監督である、とんでもなく難解で一体どんな筋なんだかさっぱり分からん映画を見せられるのではないのか!?と若干身構えながら見たわけなのだが、その心配は杞憂に終わった。
少なくとも表層的な映画のストーリーは、ガンを宣告された元プレイボーイ、ジョルジュ…この本人は一切画面には登場しない…をめぐり、友人家族や別居中の妻、その新しい恋人といった少ない登場人物たちが、彼の運命に泣き叫んだり、焼けぼっくいに再点火して言い寄ったり、田舎芝居の稽古に精を出したりするといった具合で、難解な部分は一切ないし、いつの間にやら女性キャラ同士でジョルジュの取り合いに発展するあたり、益体もないながら誰がプレイボーイを射止めるのかそれなりのサスペンスが仕掛けられたストーリーになっており興味の持続は図られている。セリフ回しも思わずクスクスとさせられるもので、演じる役者の芸達者ぶりもあって中々楽しめるものだ。
しかしこの映画に観客が魅了されるのはそのストーリーというよりは、その奇妙な演出である。まず、上記のジョルジュを巡る3カップルの男女以外は一切画面に登場しない舞台劇的演出は映画全編に渡っており、まるで教育テレビのセットのような書き割りの建物の前で演技が展開するのだが、一番最初に画面に登場する男性は、舞台ではあり得ない特撮演出で、じんわりと画面に染み出るように誰もいない空間から出現する。
お、これは幽霊等の超自然的存在が活躍する話なのか?と思うと一切そのようなことはなく、特撮演出で登場するパターンはこの男性以降には全くない。ほとんどの画面転換はイギリスのヨーク市郊外の住宅をイラスト化した画にズームインする形で行われるが、時折、実際のイギリスの田舎道をヘッドライトをつけた車が走る形でも行われ、それがどこからどこへ行く車なのかは良く分からない。格別に変なのは登場人物たちがもめている時にひょっこりと芝生の下から貌を出すモグラのぬいぐるみ。何の説明もないし、中途半端なデフォルメがむしろ可愛くないという代物。何よりこの映画「愛して飲んで歌って」ってタイトルで、フランス語の原題を見ても確かにそのままの訳出っぽいんだが、愛の話でもあり飲み会のシーンも出てくるものの、歌なんか一回も歌うシーンは出てこない…いったいこの変としか言いようのない演出の数々は何なのか?
正直に言って現在のところ説明はし難いながらも、見た後の眼底にやたらと引っかかり続けるこれらのイメージが、この映画を印象的なものにしている。ライトに観ることが可能ながらも、不思議な演出手法が呼び起こすズレ感覚をも楽しむことができる拾い物。レネの他の映画もうっかり見てみたい気になった。

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