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1月 12, 2010

アンジェイ・ワイダ監督「カティンの森」(★★★★)

アンジェイ・ワイダ監督「カティンの森」を岩波ホールで見た。

http://katyn-movie.com/pc/

第二次大戦初期、独ソ不可侵条約で一時的同盟関係にあったナチス・ドイツとソビエト・ロシアは1939年、同時に隣国ポーランドを侵略、歴史上何度となく大国の領土分割で地上から消滅してきたポーランド国家はまたも消滅の憂き目を見る。
映画はナチス占領地域とソビエト占領地域の間に位置する橋の上で東西から逃れてきた難民が鉢合わせるところから始まるのだが、挟み撃ちにあって逃れてきた人々が自分の国土のど真ん中で逃げ場をなくし途方に暮れるというシーンは、ポーランド人が欧州史においてこれまで負ってきた悲劇の繰り返しを象徴し印象深い。

しかし、国軍将校である夫を追ってこの新たな国境にやってきた主人公アンナの未来はさらにいっそう悲劇的である。赤軍捕虜となったポーランド将校はスターリンの命により一万数千人が虐殺され、森林地帯に埋められることになるからだ。史上名高い「カティンの森事件」である。このあと、物語はこのアンナをはじめ、捕らわれた3人の将校の妻や親族たちにより紡がれる。ナチのソ連侵攻により旧ソ連占領地域での虐殺事件が明らかとなるや、ナチは殺された将校たちの親族に、反共プロパガンダ放送への協力を迫る。映画では高官である大将の夫人に対しSSがあらかじめ用意されたプロパガンダ原稿をテープの前で読み上げるよう要求するが、この大将夫人が毅然として拒否するシーンは素晴らしい。
大戦終結とともにポーランドは全土がソ連に占領され、将校たちを虐殺した当事者といえるソビエト・ロシアがポーランドを支配することになるのだが、スターリンは再びカティンの森から遺体を掘り返し、形ばかりの調査と共に事件の発生年を書き換え、虐殺事件をナチの戦犯行為と発表する。
ここにおいてポーランド国内では同胞に対する為政者の虐殺事件としてカティンの森事件を語る風潮は完全に抹殺され、当の被害者である将校の親族たちにとっても自分の親や親戚が殺されたことは公式に語るのを禁じたタブーとして、戦後50年に渡って重苦しい沈黙を強いられることになる。

自らの父親も同じ事件により虐殺されたワイダ監督の描く映画は、相当キレまくってもいいような状況にも関わらず、しかし淡々と親族たちの戦後の苦しみを描き続ける。監督は、この長年に渡ってタブーとされてきた事件を総括しようとするようなことはなく、ただ戦後ポーランド史上はじめて芸術作品としてこの事件を語る一本目の映画として、事後の国民史において事件を語る端緒を用意する姿勢にとどまる。この恥辱が歴史に刻まれるのは、それが行った非人間的所業の重々しさよりもむしろ一層、この史実を事実どおりに語ることを禁じられたポーランドの人々の宿命にこそあるのだというのが映画の本当のメッセージではないかと思った。

端的に「おもしろかった」と表現するのは憚られるが、非常に意味深い映画だといえる。ペンデレツキの音楽の使い方や、実際に事件が発生したポーランドの町村を舞台としたロケも非常に素晴らしい、意味深い映画だと思った。

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