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9月 18, 2006

「マッチポイント」(★★★☆)

ウディ・アレン監督のイギリス映画「マッチポイント」をシネスイッチ銀座で見た。

ファーストカットの美しさと流麗な語り、美しい撮影に「いよいよ巨匠の箔がついたか?」と最初のうちは大変にワクワクさせられ、スカーレット・ヨハンソンの登場とそれに続くいくつかのシーンには大いに感服したのだが(エミリー・モーティマーの演じる、実に可愛らしくいい子ではあるが退屈な女の子との会話の後に、遂に現れるヨハンソンの妖艶さはどうだろう!)、ポロに乗馬に狩りにオペラ鑑賞・・・というこれでもかな英国上流階級っぽい展開にはちょっと恥ずかしさを覚えてしまった。
特に、映画のクライマックスともいうべき壮絶なシーンで、ヴェルディの「オテロ」が鳴り響くのは・・・。それはあまりにも直接的すぎないか?
もちろん、”ベッソン以降”のヨーロッパ映画などに比すると充分に風格があるのだけど、それでもいかばかりかの邪気の無さを感じてしまうのだった。
まあ、この邪気の無さがウディ・アレンという人なのかもしれない。とにかくスカーレット・ヨハンソンの魅力の周りを惑星のように巡る映画である。

(9/19追記....以下はネタバレを含むので未見の方は見ないほうが吉です)

以下、問題のシーンに流れる「オテロ」の歌唱について。(ネタバレなので改行入れまくります)












































その後、フェントンが猟銃を持って殺人に及ぶシーンのバックに「オテロ」の二重唱が鳴り響く意味について考えてみた。
この二重唱はイアーゴーの策にハマったオセロが妻デスデモーナーの不貞という嘘を信じてしまい、天に復讐を誓うシーンの歌唱だが、見ているときは「オテロ」の妻殺しの物語というところだけを考えて「あまりにも分かりやすくて恥ずかしい選曲だな」と思っていた。
しかし後々考えてみると、あれが実はフェントンの内面に流れていた音楽であるとすると結構面白い。

つまり自分以外の力の働きによって愛する人を殺害するに到るのがオセロという役どころなので、それと妊娠した愛人を殺害することで解決に到ろうとする自分を重ね合わせようというのは、愛欲に溺れるだけ溺れて人のことは何も考えない、いかにも無責任な人物であるフェントンという人間ならやりそうな、ナルシシズムが大爆発した選曲と考えることができそうだからだ。
そうした意図をもってアレンが「オテロ」を鳴らしたのだとすれば、けっこう手の込んだ仕込みであるなと考えられる。
実際、フェントンという人物は本編に登場まもないころに、ドストエフスキーの「罪と罰」を読むシーンで知的な人物かと思わせたすぐ後におもむろに「ケンブリッジ版罪と罰ガイド」を読みはじめ、ハウトゥ野郎の地金を露出させる。
オペラ・ファンであるフェントンが自らの殺人に「オテロ」の音楽を重ね合わせて行動するというのも、そうした深みのないキャラクターの内面描写としてみれば非常に納得の出来るものといえる。

ちょっとこのへん面白かったので鑑賞翌日ながら星を白☆ひとつ追加。

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