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11月 21, 2005

「グロテスク」(★★★)

最近私の体はタバコへの耐性の弱さを露呈しつつあるらしく、ずっと腹がゆるい。
初めて試しに吸ってみたピースメンソールの香料がキツかったのもあるのかもしれないが・・・。

木曜はグループ全社のイベントで久しぶりに大人数の前でしゃべらせてもらったのだが、聴衆のみなさんはこの壇上でえらそうにしゃべってる奴が、まさかうんこがゆるいことに悩んでいるものとは思ってもみなかっただろう。

そんなわけで体が弱っているうえに仕事が忙しい折に桐野夏生を読む・・・これはますますきつい。
しかも「東電OL殺人事件」にモチーフを得、昼は大会社の総合職だが夜は娼婦となる中年の女性が、悲痛なまでに自己を鞭打ち崩壊させていく過程を描いた小説「グロテスク」である。(まあ、実際にはその箇所は筋全体の5分の1程度のものなのだが)
ざっくり言って、非常に暗鬱な気持ちになる一冊であった。

「柔らかな頬」と間をほとんど置かずに「グロテスク」を読んだのだが、スイスイ読み進められるわけでも、読んでいて楽しくなるわけでもない小説なのに不思議と読んでしまうのが面白い。
女性小説という一面はもちろんあるのだろうけど、私にとっては、どちらも死というゴールに向かってまっすぐに・・・あるいは迷走しながら死んでいく魅力的な登場人物が登場すること、また、その物語を傍らにみつつ現世という無間地獄を彷徨う人々が語り部となっていることに惹かれるところがある。

半分以上読まないと、「このままイヤな人間がいやな物語を続けるだけの小説なんじゃねえのか」とやめてしまいかねないが、悪意に満ちた語り手が意外な一面を見せる終盤には正直言ってある種の感動をおぼえた。いや、泣けるとか好きになるような展開ではまったくないんですが。

殺人犯である中国人チャンが自らの手記で「自分は柏原崇に似ていると言われた」と書いているため、裁判の傍聴でその顔を見ようとした語り手が、実際の犯人の顔を見て

ああ、どうしたことでしょう。どこが「柏原崇」なのでしょう。

とか書いてんのには思わず笑った。カギ括弧までつけなくても。

ドストエフスキーだってもう少し笑いがあるぞ、と思わずにいれない重苦しさに満ちた前半にくらべ、後半では戦慄が乱れ飛ぶ暗夜のカーニヴァルとなる展開も、よく練られているなあと思った。しかしまあ体の弱っていたり、仕事に集中しなきゃならんというときに読む小説ではない。

最近読んだのはほかに「日本怪奇小説傑作集1」、石田衣良「LAST」、平井呈一編訳「恐怖の愉しみ 上」など。このところ暗鬱なものばかり読んでいるので、次は久々に冒険小説でも、ということでクィネル「パーフェクト・キル」のつもり。

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コメント

「グロテスク」えぐいよねぇ。。(^^;)
登場人物の誰一人として、びた一文感情移入できないんだもん。
でも、なんと言うか「怖いもの見たさ」みたいな不思議な吸引力
があるんだよねぇ。読み終わった後、どっと疲れが押し寄せて
くるけど(^^;)

私のエロセンサーが反応しました。読んでみます。(最近のエロセンサー反応作品「海猫」「春の雪」)

読みました。思ったより後味悪くなかったです。高校時代のエピソードは「そうか~、それであんな感じだったんだ~。なるほどね~。」と思い、のんきに30代まで生きてきた自分にあきれてしまいましたが、後はあまりにリアリティーがない上にすごいこと書いているわりには冷静な文章で楽しく読めました。(映画「スイング・ガールズ」でヒロインの子がマンガのヒーローみて、「こんなカッケー奴いないよ」といっていた感じ。)やはりあれくらい上手にノンフィクションが書けないとプロにはなれないんだな~と思いました。

いやはや、さめた文章ですごいこと書くあの文体でなかったら、おそらくとても読めない作品ですよね。
でも途中からは不思議なくらいのめりこみました。
中国人チャンのサイドストーリーが語られ始めるのには何と突飛な展開かと思ってたけど、けっこう面白かったし、最終的に日本社会のグロテスクさを描こうとした作者の意図がわかると成る程ナットクでした。キャラクターそれぞれが「超人的」すぎるので、リアルに捉えられるかというと難しいですが。

>やはりあれくらい上手にノンフィクションが書けないと

すいません、正しくは
「ノンフィクションをフィクション化できないと」ということです。(滝汗)

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