September 06, 2004

丹下左膳餘話 百萬兩の壷(★★★☆)

ユーロスペースの特集上映「山中貞雄 映画を生き抜いた天才監督」で、山中貞雄監督の「丹下左膳餘話 百萬兩の壷」を見る。こういう古典中の古典を見るのも久しぶりだ。
トヨエツ主演の「丹下左膳/百万両の壺」は言わずと知れたこれのリメーク。出来はそんなに褒められたものではないと小耳には挟むものの私は未見なのでコメントできず。

この山中版「丹下左膳」については、日本映画黄金時代の娯楽作の典型として存分に笑って楽しませてもらった。
山中貞雄の天才は、しぐさのコミカルさを極限まで押し進めたような大河内伝次郎演じる左膳の造形と、そんな左膳がまじまじと子供の顔を見つめる時の間の取り方のうまさ、などに見えるだろう。
同時期の古典的ギャグ映画としては、祝祭性で勝るマキノ雅広の「鴛鴦歌合戦」を個人的にはより好むところだけど、「丹下左膳」もおさおさ劣っているわけではない。
「鴛鴦歌合戦」にしてもそうだが、まっさかさまに国家総力戦へ滑り落ちていく寸前のような時代に、こうした傑作が作られたというのはすごいことだと思う。

あと、毎回くず屋が出てくるたびに妙に荘重な音楽が流れるのに笑わされた(^^)。

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May 09, 2004

黄線地帯(★★★★)

チャンネルNECO新東宝「地帯(ライン)シリーズ」一挙放送三本目、石井輝男監督「黄線地帯(イエロー・ライン)」。
シリーズ唯一のカラー作品で、ギラギラした色で描かれたカスバの中でストーリーが二転三転する。石井輝男の本領発揮である。

ある男に「人の生き血をすする悪党を一人葬ってほしい」とコロシを頼まれ、それと知らずに神戸税関の役人を殺害した天知茂は、クライアントの裏切りによって警察に追われる身となり、通りすがりの踊り子三原葉子をさらって東京から神戸に逃亡する。
三原葉子の恋人である事件記者吉田輝雄は、神戸が現在、日本人売笑婦を黄色人種の性に溺れた外国汽船の船員に世話する「黄線地帯(イエロー・ライン)」組織の巣になっていることを報ずると称して取材許可をとり、三原葉子を追って神戸のカスバに潜入する・・・。

三原葉子の軽々としたキャラクターと深刻顔の天知茂とのアンバランスさが楽しいバディ・ムービーになっており、カスバの原色の混沌の中、映画はじつに魅力的に展開する。
三原葉子は神戸にむかう列車のトイレで、持っていた百円札に「連れの男は殺人犯です」と書き記すのだが、ふつうの映画観客の常識からすれば、これは重大な手がかりとなるはずだ。ところが百円札は思いもよらない行き渡り方をして見ている方をハラハラさせるものの、結局三原葉子にとっては何の役にも立たない!実に驚くべき筋はこび。とうてい常人の思いつくところではない。
吉田輝雄がカスバの中で捜査をすすめるうちに出会う外国人娼婦ムーア(スーザン・ケネディ)も意味不明である。ブロンドの白人女優なので普通に白人の娼婦でいいじゃねえかと思うのだが、なぜか顔にスミを塗って黒人に扮しており、しかも着物なぞ着ている!物凄いインパクトだ。

存分に石井輝男的映画世界を堪能できる傑作。天知茂もキャラが立っていて素晴らしい。

by k-tanaka

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May 08, 2004

白線秘密地帯(★★)

チャンネルNECOで石井輝男監督の新東宝時代の作品「白線秘密地帯」を見る。
ビデオ化なし、CS初放送というレアものだったが、レアなのにはやはり理由があった。
面白くないのだ。

売春防止法の施行により、いわゆる「赤線」などの地帯がつぶれていったが、人類最古の商売ともいわれる売春は決して無くならない。散り散りばらばらになり、一部の人びとは地下に潜って商売を継続していく。彼らはさまざまな別の業種の顔をして営業を続け、アングラ雑誌の掲載情報などを巧みに使い、性に飢えた男たちを引き寄せる・・・。
トルコ風呂で起きた殺人を警察が追ううちに、そうした非合法売春の巨大なネットワークが浮かび上がってくるというお話。

しかしまあ、現代にあって非合法売春を追うというストーリーが緊張感を持ち得ないのは明らかなのだが、当時としてはけっこう重大な内容だったのかもしれない。なにしろ警察に押し込まれた売春バーの従業員が、拳銃を抜いて警察に発砲するのだ!
こいつが人殺して埋めていたというのならわかるが、たかがと言っては申し訳ないが売春である。銃撃戦やるほどの内容か!?
現代の感覚ではうかがい知れないものがあったのかもしれない。
あるいは、「ちょっとこのへんでハデにしておかないとナ・・・」という適当な映画的都合だったのかもしれないが。

筋は退屈だが、ラスト、どこぞの港で売春組織のボス一味(手下に若き日の菅原文太がいる)相手に宇津井健演じる刑事がみせるアクションは、「網走番外地」シリーズを思わせる中々ダイナミックなもの。
石井輝男作品のキッチュな魅力は感じられないが、アクションを撮る手腕を感じさせてくれた。

天知茂も出ているが、いてもいなくてもいいような意味不明の役だった。
出さないとまずい事情でもあったのだろうか・・・。

by k-tanaka

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May 04, 2004

極道恐怖大劇場 牛頭(★★★)

レンタルDVDで三池崇史監督「極道恐怖大劇場 牛頭(ごず)」を見る。

どう見ても普通のチワワにしか見えない犬をつかまえて
「オヤジ、あれはヤクザを襲うために特別に訓練された、ヤクザ犬に間違いありません。
やられる前にやらねえと
といってボコボコにする哀川翔。
組長からアイツはもう頭がだめだからヤクザ処分場(なぜか名古屋にある)に連れてけ、と命を受けた弟分の曽根英樹は、哀川翔をムスタングの後部座席に乗せて名古屋に入るのだが、哀川翔はどういうわけかダッシュボードに頭をぶつけて死んでしまう。そして死んだ哀川翔の死体は、曽根が喫茶店に入っている間に消えてしまうのだ!

次々と起こる不条理な事態と、頻発する「乳牛」のモティーフ。
ダンテの地獄巡りにも比すべき名古屋旅行は、映画史上空前の殺人シーン(素晴らしいアイデアである)と誕生シーンに結実していく・・・。

爆笑の連続。
しかし石井輝男やサミュエル・フラーのように狂った映画というわけではなく、さめた頭で撮られたヘンな映画というのが近いのではないかと思う。なんか「けものがれ、俺らの猿と」(須永秀明監督)見てる時の感触に近いものを感じるなあ。
曽根は行く先々で「あんた・・・名古屋の人じゃないね」とあたかも悪いことででもあるかのように問われるのだが、
駐在所の警官に

「あんた、名古屋の人じゃないね。
東京?横浜?

僕、香港ですけど

と言われるシーンにもっとも参った。

吉野きみ佳、かわいいんだけど・・・鼻の脇に皺ができるようになったのね。ウーン。

by k-tanaka

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からっ風野郎(★★)

増村保造監督「からっ風野郎」をレンタルビデオで見る。
三島由紀夫が主演ということで増村作品の中では比較的著名な本作だが、その三島由紀夫が主演であるが故にイマイチ感漂う作品だった。
川口浩ならば難なく演じてしまう、青春のエネルギーの空回り、生き急ぎ感が、考えすぎてしまうせいなのかどうか分からんが三島由紀夫の演技からは漂ってこない。これじゃ単なる道化回しだ。
こう言っちゃ悪いが、船越英二が劇中でしばしば主人公の似姿として見つめるサルの玩具、これ以上のキャラクターが感じられない。キャラにはまってるといえばそうとも言えるんだけど、なんか違うんだよなあ。

脇を固める船越英二や若尾文子が良い(しかし、主人公のどこに惚れるのかさっぱり分からない)ので、ますます三島のダメさが際立つ。ああ・・・。

神山繁の殺し屋はニヒルでなかなか良いっす。

脚本は黒沢明作品などで著名な菊島隆三。たぶん増村作品はこれだけだ。

by k-tanaka

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May 03, 2004

わたしのSEX白書 絶頂度(★★★)

曽根中生監督「わたしのSEX白書 絶頂度」を衛星劇場で見る。
すべてのセックスにはある種の喜劇性が漂うものと私は思うが、この映画に出てくるSEXはラストの凄絶な3Pを除いてほとんどギャグにしか思えん
しかしながらギャグ映画ではない所がなんとも切ない。金子修介のロマンポルノ作品があっけらかんとした笑いに満ちているのに比べ、この映画は屈折しており、地べたを這い回るような人間の性の営みを「もお笑うしかないだろう」というような感じに描いているように思う。

三井マリア演じる主人公の病院採血係が裏本写真で稼いでいるヤクザ者と病院の裏で話し合うのだが、近くの建物が巨大な鉄球で破砕されており、その「ドーン、ドーン」という音を背後に聞きながら三井マリアの性の崩れが始まる。このシーン、実に美しい。

病室で三井マリアの弟が看護婦を前にギターを爪弾きながら「金太の大冒険」を唄うシーンには深夜ながら爆笑させられた。

 ♪金太負けが多い 金太負けが多い♪

 ♪きんた(自粛)

by k-tanaka

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May 02, 2004

座頭市兇状旅(★★★☆)

衛星劇場で田中徳三監督「座頭市兇状旅」を見る。
やはり勝新座頭市は面白い。
上州下仁田に辿りついた市が、首にかかった賞金目当てに切りかかったチンピラを斬り捨てるのだが、いまわの際に「おっ母・・」と呟いたのを哀れに思い、下仁田の親分佐吉の下働き婆をしているこのチンピラの母親の元を尋ねる。
「よぉ、あいかわらずだな鉢巻き婆さん」と出入りの渡世人に声をかけられる婆ちゃんのキャラクターがとっても良い。
「どうもすみません、息子さんはあたしが斬りやした」と市が詫びるのを聞くや、薪ざっぽうを振り上げて市に打ちかかろうとするが、「こうして名乗り出るあたりをみると、お前もあながち悪党というわけではなさそうだ・・・」と矛を収める。息子の埋葬にあたって、「どこぞで野たれ死にしなかっただけ、お前にゃあ功徳があったのかもしれねぇなあ、なんまんだぶなんまんだぶ」と念仏を唱えるのだけど、こういうシミジミといい科白というのは最近の映画じゃ滅多に聞かない。
二代目を継いだばかりの佐吉親分と、たまたま市が宿泊した旅籠の主人との浅からぬ因縁が、まあ大抵のヤクザ映画で悪の根源がコイツであるところの安部徹のコスい陰謀により、血で血を洗う縄張り争いに発展していく。
また、旅籠の娘と二代目佐吉の淡いさわやかな恋心に対して、市とかつて淡い関係であったものの今や賞金稼ぎのくずれ侍にドロドロに依存している女性おたねの業の深さが対置されていて、この男女関係のコントラストが物語に奥行きを与えている。
止める術もない争いを前に、鉢巻き婆ちゃんが「これが渡世というものとは分かっちゃあいるけどね・・。あたしはもう年をとり過ぎた」と市を前に独白するシーンでは、思わず涙誘われる。

安部徹を筆頭とする小悪党どもを市がなで斬りにするシーンでは、見てるこちらとしちゃあやはり「市斬りまくれー!!ウジ虫ども皆殺しダー!!」とか思ってしまうのだが、ラストで婆ちゃんに頭を下げられると「人斬って礼言われるのは具合がよくねぇ・・」と言わんばかりに照れくさそうなのがイイ。
男女の交わりについてもそうだが、どこかにイノセンスな部分を残しながらも、シリーズ通したら数百人は斬り殺していそうな座頭市というキャラクターに対して興味が湧いてくる映画だった。
そういえば田中徳三監督は、前に書いた「弁天小僧」では伊藤大輔の助監で入っていた。大映ってステキ。

by k-tanaka

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April 27, 2004

弁天小僧(★★★★)

レンタルビデオで伊藤大輔監督「弁天小僧」を見る。
歌舞伎の定番、「白浪五人男」のリメークだが、近年よく見かける出し殻を煎じ直したようなリメーク映画とは全く違い、堂々たる傑作である。
「知らざぁ言って聞かせやしょう」の定番シーンが話中話になっており、実に巧みな脚本。
浜松屋蔵前の場で出てくる、今となってはギャグにしかならない因縁話さえもが切々と胸に迫る落涙モノのエピソードになっている。
そして伊藤大輔の縦横無尽の画造りはどうだろう。地面に落ちた櫛に多くを語らせるディティールの妙から、屋根に登った弁天小僧の背中からグーッと見渡す、町いっぱいを埋め尽くすような御用提灯の画造りまで、映画の快楽にひたすら酔わされる86分である。
役者もあまりにも素晴らしい。市川雷蔵演じる弁天小僧の乱れ髪の色気といったら!勝新太郎演じる遠山金四郎の男ぶりも素敵だし、脇を固める演者も、どれもが輝いている。
個人的に痺れたのは、日本佐衛門(駄右衛門?)の以下のセリフ。

「同じお縄を頂戴するなら、晴れの舞台は、お江戸だねェ・・・」
・・・・旦那!かっこ良すぎっス!!!!
かつては、こんな仰ぎ見るような傑作が毎年生産されまくっていたんだなァ・・・・

by k-tanaka

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