March 06, 2005

「ローレライ」(★★★)

樋口真嗣監督の頑張りには申し訳ないが、けっこうフツーの映画でした。
大変に豪華なキャスト群ではあるが、妻夫木はいてもいなくてもどうでもいいような役であり、佐藤隆太にいたっては存在価値がまったく見えなかったり、使い捨てキャラの多い映画になってしまっていたような。
映画の構造としては、男船バリバリな潜水艦という空間に対して、妻夫木君と香椎なんちゃらサンのお子さまロマンスを潜水艦から切り離し可能な特種潜水艇に封印しちゃうというのは上手いかなと思う。
しかしどうにも、堤真一の海軍参謀も役所広司の艦長もギバちゃんの副長もいまひとつ役不足な感が否めない。
何といっても、いかがなものかと思うのは石黒賢の出演ですな。
お前火サスあたりに出てくる時と寸分違わぬ役回りじゃねえかと。お前が出てくるだけで大体映画中盤の展開、雰囲気的に先取りできちゃうんだよと小一時間問い詰めたいのだが、まあこれはキャスティングディレクターの責とすべきであろう。
あとは一番セリフ語りで引き付けねばならないシーンのピエール瀧がどうにも上手く喋れてないのが歯がゆかったり、色々な面で芸域の限界を見せられてしまった映画なのだった。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

November 28, 2004

「血と骨」(★★☆)

新宿に出、ピカデリーで崔洋一監督「血と骨」を見る。期待は大きかったが、オダギリジョーの意外な好演と鈴木京香の入魂の老けメイクにも関わらず、全然ボルテージがあがらないまま終わってしまった。時間的な制約のためだろう「化け物」と呼び称される金俊平の強烈なキャラクターを描き切れずに終わった感じがする。たけしの演じる主人公がどうも小粒であり、振るう暴力も何というかDVの枠にとどまるものである。原作を読むと金俊平というキャラクターはモンスター以外の何ものでもなく、人間性というものを超絶した何かである。映画もそれゆえにモンスター映画であることが期待されるのだけど、たけし演じる金俊平は過剰なDV野郎で、何か劇中の寺島進がもっとひどくなった奴ぐらいに見える。これは「金俊平といえど1個の人間である」という監督のメッセージなのだろうか。もしくは映画の暴力描写に不感症になっている私の眼のせいなのか。「血と骨」の金俊平は一種のネガティヴヒーローとして魅力的ではあるが、個人的には妻や娘を殴るような父親は死ねと言いたい。特に田畑智子を殴ってはいけないし、まして・・。
あと、後半でたけしと松重豊がどっかの鈍行で旅するのだけど、ネスカフェの空き瓶に入れたキムチを弁当につけて食ってるのが妙に面白かった。
全然別の話だが、原作小説には確かスト破りみたいなエピソードがあったような記憶があり原作本を探すが見当たらず。売却したような気もしていたのだが、こういう時に困るから本はなるべく売りたくないのだ。駐車場なんぞいらねえから共同書庫つきの物件でもないものか。意外と作ったら商品差別化になりそう・・・。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

September 27, 2004

IZO(★★★☆)

ひさしぶりに渋谷で映画。シアター・イメージフォーラムで三池崇史監督「IZO」を見た。どんな状況であれ武知鎮典-三池崇史の映画は全部スクリーンで見て行きたいと思っていたので、ようやく願かなった感じ。
さて今回はこれまでのプログラムピクチャー枠突破的傑作とは違い、もうやりたいことだけやった、武知版マトリックスと化している。
串刺しの刑に処せられた岡田以蔵(IZO)の怨念が時空を越えてあらゆる所に出現し、社会を支配する仕組みに属する者どもを片端から斬って捨てる…どころか、自分を規定するすべてのもの、たとえば母親までをも一刀両断。システムが完全たるべきために必要な不完全…矛盾がIZOであると大滝秀治は話の途中で語るのだが、なんかこれ「リローデッド」で聞いたような理屈ではないか?
しかし「マトリックス」に出てくる敵はみんなヒューゴ・ウィービングとかいったエージェントに変化するんでいくらボコったところで痛みも感じないが、IZOの前に立ち現れる者たちはみんなそのままの姿でバッサリ斬られるので実に呵責ない。新撰組も斬られる、ヤクザも斬られる、対テロ特殊部隊も斬られる、股旅も斬られる、PTAも斬られる、なぜか小学校の先生だけは斬られない?(←謎)近年のタブーも犯してるが、これはまあR-15にされちゃうだろうなぁ・・・。
時空間もめちゃくちゃで、江戸の町に落っこちてきたIZOが対テロ特殊部隊に包囲されたかと思えば、現代の盛り場を御用提灯を手にした捕り方が突進してきたりするのには笑った。(もちろんどっちも斬られ死に)

IZOの敵としては最もチョロかった不良少年軍団にIZOは以下のように言う。
「おまえはなんのためにおまえなのだ?」
「てめえ、バカボンのパパかー!!
と言って打ちかかった不良は日本刀で袈裟がけにバッサリいかれちゃうわけだが、もちろんIZO自身もなんのためになんか分かっちゃいないはずだ。クソ食らえなあらゆる枠組みを叩き切る「怒り」そのものがIZOなのである。
したり顔でこんなクソ世の中を飲み下してどうする?怒れ!と凶暴な怒りをブチ上げたのが「IZO」という映画なのだろう。そういう意味では都庁前で命乞いをするスーツ姿のビジネスマンをなで斬りにするシーンが最も良かった。どうやら私もけっこうこの世の中が嫌いらしい(^^;)
ところで、ときおり美木良介がヒューゴ・ウィービングみたいな顔するんだけど、あれはやっぱり意識してるんだろうか。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

June 09, 2004

下妻物語(★★★☆)

渋谷シネクイントで中島哲也監督「下妻物語」を見る。

冒頭から超ハイテンションなタイトルロールの後、いきなり主人公がキャベツを積んだ軽トラとハデに事故ったりして、一気に引き込まれる。
ひとつびとつの演出はすべてがマンガチックで過剰(たとえば、明白にマンガそのものである超ロングでの飛び蹴りだ)なのだが、過剰に凡庸であると言う他ないような「キャシャーン」なぞとは違って、落しどころが適切になるよう配慮されているので、安心して笑うことができる。阿部サダヲや荒川良々など、出演陣も今が旬なあたりをおさえていて、商品としてよくできています。

筋はとてもオーソドックスな青春映画。すなわち、小さいころからのスタイルを固定しきった主人公(それはがちがちのロリータファッションへの結実として映像的に表現される)が、いかに周囲との関係性を構築していくかのドラマである。
そうした背骨部分が押し付けがましくなく、連発されるハイテンションなギャグと交錯してさりげなく提示されるあたりのサジ加減が実に絶妙。演出のうまさに脱帽させられる。

個人的に青春映画には、そこに青春であること自体の過剰さが見えてほしいと思っているので、ギャグがあれだけ過剰なのに「メインの筋は、意外とマトモ」だったりするあたりが★4つ以上をつけるのがためらわれる由縁だが、一般的にはそんなこと全く問題にはならないだろう。

深田恭子は意外と好演。

by k-tanaka

| | Comments (0) | TrackBack (0)

May 09, 2004

CASSHERN(★)

ワーナーマイカル板橋で紀里谷和明監督「CASSHERN」を見る。

開始15分、
「この人、5分以上の映像作品撮っちゃいけない人かも・・・」

開始45分、
「いつまでうだうだやってんだ!こんな話三池崇史なら3分で終わらすぞ!

開始1時間、
「もういい、頼む、早く終わってくれ・・・」

んで劇中、誰ぞのセリフで「すべて終わりだ・・」とかいうのがあったときは、ようやくこの苦痛の時間も終わりかと思って、マジで嬉しかったです。
でもその後、映画はさらに続いた・・・ウソつき!

使用音楽のセンスも最悪で、ベートーヴェンの「月光」とかバッハの「マタイ受難曲」がとてつもなく安っぽく使われ、また、ちっとも劇伴として効果的でない使われ方でいきなり椎名林檎が流れる。
本当にこの人、ミュージックビデオの監督さんなの?
宇多田の「Travelling」はけっこう良かったと思うけど、そのイメージから「CASSHERN」の音楽センスはあまりにも遠かった。

2時間あまりの拷問にも等しい映画だったが、私は紀里谷監督に同情する。

彼は現場で常に悩みながら監督していたという。
きっと本当に困っていたのだろう。
いるべきではない場所に自分がいることを知りながら、プロジェクトは今さら後戻り不能。
ものすごい金がかかっている以上、「クソ映画撮っちゃいました」とも言えない。
彼に誠実さがあるならば、そりゃ悩まずにはいられないだろう。

監督の立場には同情するが、しかしこの作品、おそらく本年度ワースト1である。

by k-tanaka

| | Comments (0) | TrackBack (0)

April 29, 2004

盲獣VS一寸法師(★★★☆)

いまどきは「網走番外地」シリーズを撮った俊才、というよりも「江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間」を撮ったカルト監督といったほうが通りが良いであろう、石井輝男監督最新作「盲獣VS一寸法師」を渋谷シネ・ラ・セットで見る。
前作「地獄」は、たしかに笑えるシーンも多かったしオウム真理教の幹部は異様に似ていておもしろかったけど、映画としては散漫な印象があった。
しかし今回は、確かに出演陣が「これは単に監督の友達ではないか?」と思えたり、DVカムになっていて画面も揺れていたりと様々な制約こそあったものの、石井輝男的な世界像はより伝わってきたように感じる。
「まだまだ石井輝男は面白い映画を撮れる!もっと予算があったらよかったのになあ・・・」
というのが、私の偽らざる感想だ。

たとえば色とりどりの風船にぶら下がって宙をさまよう人間の生足、小林(リリー・フランキー)と明智(塚本晋也)が上り下りする帝都の暗い坂道からただようラビリンスの雰囲気。やっぱりあったレビューショーのシーンでは、仮面ライダーに出てくる地獄大使のコスプレなんだけどおっぱいみたいな部分がある奴が出てきて名前が地獄女史だったりする意味不明。かと思えば一寸法師が自由を求めて曲馬団に入るが、そこでいじめの悪夢に遭うシーンで「おれは好きなことをやってやる!」という宣言に深いものを感じるし、そうかと思うと「自分の腕を切り落として逃げる泥棒」などというストーリーにまったく関係ないエピソードが突如挿入されたりする。
これぞ映画だ。

こうして書くと何だかこれこそ散漫な作品じゃねーか?とか思われるかもしれないけれども、この振幅は右も左も石井輝男的世界観のフィールドにきちんと収まっていて、実はじゅうぶんに統一感があるのだ。
いきなり湯屋のシーンになり、盲獣が裸の女を揉んでいるなどの突拍子もないシーン展開も輝男的であって、むしろしちめんどくさい説明とかをバッサリ切って見せたいもの(観客の「見たい」ものと微妙に違った方向に先回りしているのが笑える)だけがバーンと画面に映るのは快感でさえある。これぞ石井輝男映画の呼吸なのだ。
別に盲獣と一寸法師が戦うわけではないという羊頭狗肉ぶりも、これはむしろ映画史における常識というべきであろう(笑)

公式サイト
初日舞台挨拶(スローラーナー)

by k-tanaka

| | Comments (0) | TrackBack (3)

April 09, 2004

アイデン&ティティ (★★★☆)

映画見てから、2週間くらい経っちゃいました。
遅くなってごめんなさい。
シネホル会員の活動をさぼっていたtnkmrです。

さて、『アイデン&ティティ』。
もともとシネホルの活動がなければ、
自分一人では観に行くことのなかったであろう、
単館系、自主製作臭プンプンの映画。

「クドカン脚本」とか「中村獅童出演」くらいしか、
事前情報は持ちあわせていなかったので、
最初からあまり期待はしていなかったが、
始まってみると、これが想像してたより面白い。

武蔵大の友人がいるのだが、
彼らは大好きなんじゃないだろうか。
もう、とことんロック魂。
B'zやラルクはロックじゃねぇ、って感じの。
メジャーなんて糞だぜ!みたいな。

「ロックバンド」としてメジャーデビューし、
それなりのヒット曲も出したものの、
事務所やメンバーから売れ線を要求される現実と、
「本当のロックはこんなんじゃない!」と、
幻想の「ボブ・ディラン」の前で、苦悩する男が主人公。

宮藤官九郎脚本については今まで、
「話し言葉のテンポ感と、
 サブカル的な軽いノリで、
 キャーキャー言われてるだけでしょ?」
と遠巻きに眺めていたのだが、
少なくとも『アイデン&ティティ』は悪くない。
っていうか面白い。
すごいぜ、クドカン!

現実だか夢だかわからない雰囲気の中で
主人公の前に「ディラン」が現れ、
その言葉はハーモニカの演奏によって、
頭の中に直接語られる、という演出や、
役者達が実際にスタジオに入って練習したという、
バンド演奏シーンも迫力があって良かった。

最後のほうでちょっとダレたのは傷だけど、
田口トモロヲは初監督作品として、
素晴らしいものを作り上げたのではないだろうか?


・・・だが、
根本的な部分で、気になった点が一つ、
主人公のバンド「SPEED WAY」は、
最盛期でどれだけ人気があったのかが、
劇中ではあまり描写されていないので、
主人公の苦悩が、どの程度の切実感を
伴っているものなのか伝わってこない。

結局、そこの部分が曖昧なので、
ともすれば、アングラの底のほうから、
メジャーに対して悲痛に叫んでいるようにしか見えない。
自分は、B'zやラルクもスゴイと思っちゃう人間なんで。

やっぱり、
「話し言葉のテンポ感とサブカル的な軽いノリ」
だけなのかな、クドカン・・・。

なにはともあれ、レンタルで観るには
文句ない出来(雰囲気も含めて)の映画だと思います。

by tnkmr

| | Comments (1) | TrackBack (2)

March 31, 2004

イノセンス(★★★)

とにかく映像を見るだけでも一見の価値はある。
スター・ウォーズ新シリーズを完全に超越しているイメージの奔流、これはスゴイ。(しかしながらどこまでも「ブレードランナー」の延長線上のすごさなのかな、と思われる点は微妙に思うところですが)

「だけど・・・何だかなァ」と思うのは、ここまでお金をかけ、プロジェクトとしてもでかいのに、中身は押井守の個人映画である事だ。そりゃ本当の押井守個人映画だったら「立ち食い師」とかが出てくるんだろうから押井としても妥協はしているのかも知れないが、少なくともこれだけの規模で大々的に公開される映画としては難なしとはしない。
いつも伊藤和典が脚本を書いているのに、今回は押井自身が書いているというのもその一因ではあろうけれども。。
すくなくとも、一般ピープルは感心しないでしょう。

そんなわけで今回最も燃えたのは例によって音楽だ。川井憲次はキャッチーなメロディを織り交ぜながらも、彼の本領ともいうべき打楽器へのコダワリがきちんと出ていて、普通にも聴けるし面白がって聴けるようにもできている。これは、まだ微妙に楽器(ワルシャワ・フィル)をモノにしているかどうか疑問だった前作「Avalon」に比べても、一つの川井憲次的面白さが前面に出ているように思える。

押井/川井コンビ作のサントラで最も楽しみなのは実は川井憲次の書くライナーのおもしろさ。脱力系ライターとしても大好きな川井さんの書くライナー、今回も大いに笑わせてもらいました。
by k-tanaka

| | Comments (0) | TrackBack (0)

March 30, 2004

アイデン&ティティ(★★★)

中央線風味満点。
大学映研自主映画風味満点。
でも一方で、シネセゾンみたいなミニシアターと一般劇場の間くらいの小屋で違和感なく映されるための要件は問題なくそろえた、心憎いデキの青春映画です。

私的には、確かにアツい映画なんだけど、アツさと上手さのバランスが良すぎて、もう少し過剰なところがあってもいいような気もする。
もっともっと暴れて放熱してもよかった。
放熱の後の虚脱まで見たかった。
それがファンタジーの世界に解脱していってしまっているがために、全体が一種のおとぎ話になっていて、
青春映画に切実さや、やるせなさや、粒の粗い何か(へんな表現ですが)を求めてしまう私のような人間には、いまひとつ入り込めないものがあり、惜しかった。

なんか「物足りないゼ!」という感想を書いているんですが、この物足りない部分を埋めて星3つをつけている根拠は私的にはただ一つ麻生久美子の存在です。
もう全肯定っす。「この女子大生ムリあんだろ!!」って思う部分まで含めて良し!

by k-tanaka

| | Comments (0) | TrackBack (0)