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February 06, 2005

「ピエロの赤い鼻」(★★★★)

ジャン・ベッケル監督は、かつてフランス映画が持っていた名作の匂いを今に伝える人なのかもしれない、と前作「クリクリのいた夏」を見た時に思ったのだけど、本作「ピエロの赤い鼻」にも同じような感じを受けた。

冒頭は、学校の先生をやっているジャック・ヴィユレ(ご冥福をお祈りします)が、教壇からのこのこと全身を現すと実はピエロのどた靴を履いてました、というギャグで生徒のウケを取るシーン。
つづくタイトルバックでヴィユレはピエロの仕事道具をカバンに詰めていくのだが、そこではズビグニェフ・プレイスネルの切々としたピアノ音楽が流れ、何か悲しい予兆を感じさせる。
カバンを持って出かけた先の町のお祭りで、慌ただしく到着したヴィユレは自転車競争の号砲を撃ち間違え、出場者たちは勢い余ってバタバタ倒れてしまったり、騒々しくまた友愛に満ちたやり取りが続く。

愛すべきキャラクターと睦まじい空気に満ちた中、父がピエロを演じるのを一人苦々しく思っている者がいた。ヴィユレの息子である。ヴィユレの親友であるアンドレ・デュソリエは、舞台の続く中で息子をそっと外に連れ出し、父親がピエロを演じはじめた訳を語りはじめる・・・。

「ライフ・イズ・ビューティフル」を彷佛とさせるような、ナチス占領下での痛々しい思い出がこの後展開し観客の涙を絞りまくるわけだが、いやらしいお涙ちょうだいの感じには全くならないのは、素晴しい俳優たちがまさしく適材適所に置かれているからだろう。
ジャック・ヴィユレの大らかで愛すべきキャラクターと、アンドレ・デュソリエ(ロメール映画「美しき結婚」で弁護士を演じていた、上品な知性を感じさせるヒト)の演じる冴えない田舎インテリ的帽子屋との凸凹コンビっぷりから、しぜんとユーモアがにじみ出てくる。
ブノワ・マジメルの険しい若者ぶりも良いし、ヴィユレの妻を演じるイザベル・カンドリエはこの作品のために持って生まれ出たような笑顔で、堂々たるヒロインぶりをみせる。シュザンヌ・フロンの演技には初顔見せ時から一気に引き込まれ、この老婦人は過去にどんな人生を経験してきたのだろう?と気になって仕方なくなる。
そして全編中もっとも切ないピエロの登場と退場・・・。

かつて父親ジャック・ベッケル監督が撮ってきた、その作品を見たこと自体が幸福そのものであるようなフイルム(「幸福の設計」などなど)を、息子のジャン・ベッケルも作り続けることにしたのかもしれない。
だとすると、この映画にみられる父と息子との関係が、より意味深く感じられてくるなあ・・・。などと一人勝手な楽しい想像をしてしまうのである。

2/5、初めての飯田橋ギンレイホールにての鑑賞。

※なお、ドイツ軍の中でも特に不粋なことをやるのは必ず帽子にドクロマークのついている親衛隊将校だという使い古された映画的法則があるが、この映画ではひさびさに定石通りのキャラが登場する。マニアの方は要チェック。

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