座頭市兇状旅(★★★☆)
衛星劇場で田中徳三監督「座頭市兇状旅」を見る。
やはり勝新座頭市は面白い。
上州下仁田に辿りついた市が、首にかかった賞金目当てに切りかかったチンピラを斬り捨てるのだが、いまわの際に「おっ母・・」と呟いたのを哀れに思い、下仁田の親分佐吉の下働き婆をしているこのチンピラの母親の元を尋ねる。
「よぉ、あいかわらずだな鉢巻き婆さん」と出入りの渡世人に声をかけられる婆ちゃんのキャラクターがとっても良い。
「どうもすみません、息子さんはあたしが斬りやした」と市が詫びるのを聞くや、薪ざっぽうを振り上げて市に打ちかかろうとするが、「こうして名乗り出るあたりをみると、お前もあながち悪党というわけではなさそうだ・・・」と矛を収める。息子の埋葬にあたって、「どこぞで野たれ死にしなかっただけ、お前にゃあ功徳があったのかもしれねぇなあ、なんまんだぶなんまんだぶ」と念仏を唱えるのだけど、こういうシミジミといい科白というのは最近の映画じゃ滅多に聞かない。
二代目を継いだばかりの佐吉親分と、たまたま市が宿泊した旅籠の主人との浅からぬ因縁が、まあ大抵のヤクザ映画で悪の根源がコイツであるところの安部徹のコスい陰謀により、血で血を洗う縄張り争いに発展していく。
また、旅籠の娘と二代目佐吉の淡いさわやかな恋心に対して、市とかつて淡い関係であったものの今や賞金稼ぎのくずれ侍にドロドロに依存している女性おたねの業の深さが対置されていて、この男女関係のコントラストが物語に奥行きを与えている。
止める術もない争いを前に、鉢巻き婆ちゃんが「これが渡世というものとは分かっちゃあいるけどね・・。あたしはもう年をとり過ぎた」と市を前に独白するシーンでは、思わず涙誘われる。
安部徹を筆頭とする小悪党どもを市がなで斬りにするシーンでは、見てるこちらとしちゃあやはり「市斬りまくれー!!ウジ虫ども皆殺しダー!!」とか思ってしまうのだが、ラストで婆ちゃんに頭を下げられると「人斬って礼言われるのは具合がよくねぇ・・」と言わんばかりに照れくさそうなのがイイ。
男女の交わりについてもそうだが、どこかにイノセンスな部分を残しながらも、シリーズ通したら数百人は斬り殺していそうな座頭市というキャラクターに対して興味が湧いてくる映画だった。
そういえば田中徳三監督は、前に書いた「弁天小僧」では伊藤大輔の助監で入っていた。大映ってステキ。
by k-tanaka


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