盲獣VS一寸法師(★★★☆)
いまどきは「網走番外地」シリーズを撮った俊才、というよりも「江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間」を撮ったカルト監督といったほうが通りが良いであろう、石井輝男監督最新作「盲獣VS一寸法師」を渋谷シネ・ラ・セットで見る。
前作「地獄」は、たしかに笑えるシーンも多かったしオウム真理教の幹部は異様に似ていておもしろかったけど、映画としては散漫な印象があった。
しかし今回は、確かに出演陣が「これは単に監督の友達ではないか?」と思えたり、DVカムになっていて画面も揺れていたりと様々な制約こそあったものの、石井輝男的な世界像はより伝わってきたように感じる。
「まだまだ石井輝男は面白い映画を撮れる!もっと予算があったらよかったのになあ・・・」
というのが、私の偽らざる感想だ。
たとえば色とりどりの風船にぶら下がって宙をさまよう人間の生足、小林(リリー・フランキー)と明智(塚本晋也)が上り下りする帝都の暗い坂道からただようラビリンスの雰囲気。やっぱりあったレビューショーのシーンでは、仮面ライダーに出てくる地獄大使のコスプレなんだけどおっぱいみたいな部分がある奴が出てきて名前が地獄女史だったりする意味不明。かと思えば一寸法師が自由を求めて曲馬団に入るが、そこでいじめの悪夢に遭うシーンで「おれは好きなことをやってやる!」という宣言に深いものを感じるし、そうかと思うと「自分の腕を切り落として逃げる泥棒」などというストーリーにまったく関係ないエピソードが突如挿入されたりする。
これぞ映画だ。
こうして書くと何だかこれこそ散漫な作品じゃねーか?とか思われるかもしれないけれども、この振幅は右も左も石井輝男的世界観のフィールドにきちんと収まっていて、実はじゅうぶんに統一感があるのだ。
いきなり湯屋のシーンになり、盲獣が裸の女を揉んでいるなどの突拍子もないシーン展開も輝男的であって、むしろしちめんどくさい説明とかをバッサリ切って見せたいもの(観客の「見たい」ものと微妙に違った方向に先回りしているのが笑える)だけがバーンと画面に映るのは快感でさえある。これぞ石井輝男映画の呼吸なのだ。
別に盲獣と一寸法師が戦うわけではないという羊頭狗肉ぶりも、これはむしろ映画史における常識というべきであろう(笑)
by k-tanaka


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