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April 29, 2004

盲獣VS一寸法師(★★★☆)

いまどきは「網走番外地」シリーズを撮った俊才、というよりも「江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間」を撮ったカルト監督といったほうが通りが良いであろう、石井輝男監督最新作「盲獣VS一寸法師」を渋谷シネ・ラ・セットで見る。
前作「地獄」は、たしかに笑えるシーンも多かったしオウム真理教の幹部は異様に似ていておもしろかったけど、映画としては散漫な印象があった。
しかし今回は、確かに出演陣が「これは単に監督の友達ではないか?」と思えたり、DVカムになっていて画面も揺れていたりと様々な制約こそあったものの、石井輝男的な世界像はより伝わってきたように感じる。
「まだまだ石井輝男は面白い映画を撮れる!もっと予算があったらよかったのになあ・・・」
というのが、私の偽らざる感想だ。

たとえば色とりどりの風船にぶら下がって宙をさまよう人間の生足、小林(リリー・フランキー)と明智(塚本晋也)が上り下りする帝都の暗い坂道からただようラビリンスの雰囲気。やっぱりあったレビューショーのシーンでは、仮面ライダーに出てくる地獄大使のコスプレなんだけどおっぱいみたいな部分がある奴が出てきて名前が地獄女史だったりする意味不明。かと思えば一寸法師が自由を求めて曲馬団に入るが、そこでいじめの悪夢に遭うシーンで「おれは好きなことをやってやる!」という宣言に深いものを感じるし、そうかと思うと「自分の腕を切り落として逃げる泥棒」などというストーリーにまったく関係ないエピソードが突如挿入されたりする。
これぞ映画だ。

こうして書くと何だかこれこそ散漫な作品じゃねーか?とか思われるかもしれないけれども、この振幅は右も左も石井輝男的世界観のフィールドにきちんと収まっていて、実はじゅうぶんに統一感があるのだ。
いきなり湯屋のシーンになり、盲獣が裸の女を揉んでいるなどの突拍子もないシーン展開も輝男的であって、むしろしちめんどくさい説明とかをバッサリ切って見せたいもの(観客の「見たい」ものと微妙に違った方向に先回りしているのが笑える)だけがバーンと画面に映るのは快感でさえある。これぞ石井輝男映画の呼吸なのだ。
別に盲獣と一寸法師が戦うわけではないという羊頭狗肉ぶりも、これはむしろ映画史における常識というべきであろう(笑)

公式サイト
初日舞台挨拶(スローラーナー)

by k-tanaka

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April 27, 2004

弁天小僧(★★★★)

レンタルビデオで伊藤大輔監督「弁天小僧」を見る。
歌舞伎の定番、「白浪五人男」のリメークだが、近年よく見かける出し殻を煎じ直したようなリメーク映画とは全く違い、堂々たる傑作である。
「知らざぁ言って聞かせやしょう」の定番シーンが話中話になっており、実に巧みな脚本。
浜松屋蔵前の場で出てくる、今となってはギャグにしかならない因縁話さえもが切々と胸に迫る落涙モノのエピソードになっている。
そして伊藤大輔の縦横無尽の画造りはどうだろう。地面に落ちた櫛に多くを語らせるディティールの妙から、屋根に登った弁天小僧の背中からグーッと見渡す、町いっぱいを埋め尽くすような御用提灯の画造りまで、映画の快楽にひたすら酔わされる86分である。
役者もあまりにも素晴らしい。市川雷蔵演じる弁天小僧の乱れ髪の色気といったら!勝新太郎演じる遠山金四郎の男ぶりも素敵だし、脇を固める演者も、どれもが輝いている。
個人的に痺れたのは、日本佐衛門(駄右衛門?)の以下のセリフ。

「同じお縄を頂戴するなら、晴れの舞台は、お江戸だねェ・・・」
・・・・旦那!かっこ良すぎっス!!!!
かつては、こんな仰ぎ見るような傑作が毎年生産されまくっていたんだなァ・・・・

by k-tanaka

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April 26, 2004

コールド・マウンテン(★★★)

歌舞伎町でアンソニー・ミンゲラ監督「コールド・マウンテン」を見る。
アカデミー賞授賞式の際にアリソン・クラウスとスティングが歌った主題歌などを聴くと、もうめっちゃくちゃ感動しそうな映画だったのだが、はっきり言って歌負けしていると思った。
冒頭、南北戦争での大激戦が描かれるシーンは凄い。塹壕戦のさなか、北軍が南軍の塹壕の下に多量の爆薬を埋めて点火するのだが、何やらバンカーバスターみたいな大爆発が起こり、兵士が宙を舞う。
砂煙の中、北軍の大部隊が突撃してくるのだが、爆発で開いた大穴の淵に阻まれてにすし詰めになってしまい、見下ろす立場になった南軍から狙い撃ちを食う。
南軍に属するジュード・ロウは「さあ、七面鳥撃ちだ!」と他の兵士から言われて逡巡する。
どうも同じ南軍なものだから、アン・リーが監督した「楽園をください」のトビー・マグワイアとカブるなぁと思っていたのだが(カオも似てるし)、ここはジュード・ロウでよかったなぁと思う。もしこれがマグワイアだったら、逡巡しているのかただ眠いだけなのか良く分からなかったところである。
続く血と泥まみれになった白兵戦はすごくて、ドラクロアの描いた戦争絵画の現場はこんな感じだったかと想像させる。
が・・・すごいのはここまでで、後はすべてが予測可能な、十年一日のメロドラマが最後まで続く。
ベースには南北戦争をもってきており、脱走兵狩りに象徴される戦争の非条理さに翻弄される人々を描いているのだが、いかんせん敵役はこの機に乗じて自分の土地を増やそうとしている地主野郎と手下のならず者どもで、これじゃ西部劇と変わらんではないか。
こいつら悪玉のやることも何かストーリーの必然性のレールの中にカッチリはまっちゃっていて、人品の卑しさはじゅうぶん伝わってくるんだけど、それを超えた何か非人間性の恐怖みたいなものは感じられない。
・・・だったらもっとサックリ勧善懲悪してしまえ!レニー・ゼルヴィガーに少林寺三十六房みたいな修行を施されたニコールが、得意のガンアクションとカンフーで悪人どもを皆殺し、とか!などと、あり得もしないストーリーを期待してしまったりするのである。

まあ、それほど退屈ではないので★3つ。ガブリエル・ヤーレの劇伴音楽は、まあまあという感じ。
by k-tanaka

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April 11, 2004

悪い男(★★★★)

「純愛ピカレスク。」
・・椎名林檎の歌のタイトルではない。キム・ギドク監督の韓国映画「悪い男」を一言で表現するにはこの上適当と思われる言葉が見当たらない。

街でたまたま会った「西洋美術史」を抱えた女子大生に岡惚れしたやくざ者が、彼女を罠にかけ、売春婦の境遇に落としていく、という筋。
(こんな筋の韓国映画ばかり見て感想を書くので「韓国の映画ってヒトデナシなんだな~」と思われかねないが、普通の映画も多いんスよ)
恐るべきことに、これでも純愛映画であり、実に切ない、どうしようもない男女の関係性を描いた傑作である。
売春街で、アニメキャラみたいなヅラを被って客に声をかけるようになっていくヒロインの、道端のアリを見つめる視線の美しいことといったらない。さらにいい味を出しているのがやり手婆ァ役のキム・ジョンヨン。何か異様なリアリティがあるキャラクターである。
劇場では「なんだかワケわかんない~」とか言ってる女二人連れとかがいたが、この映画に感動できるような女性とだけ付き合いたいね。(←っていう根性だから彼女ができない人)

この映画のことは柳下毅一郎氏の映画評論家緊張日記で知ったが、確かに氏の指摘するごとく石井隆的映画といえばそうかも知れない。ただし、ギャグのわけの分からなさは石井隆の上をいっている様に思う。
キム・ギドク、これまで9本の映画を撮っているという。他の作品もぜひ見たい。

4.10 at 新宿武蔵野館
by k-tanaka

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April 09, 2004

アイデン&ティティ (★★★☆)

映画見てから、2週間くらい経っちゃいました。
遅くなってごめんなさい。
シネホル会員の活動をさぼっていたtnkmrです。

さて、『アイデン&ティティ』。
もともとシネホルの活動がなければ、
自分一人では観に行くことのなかったであろう、
単館系、自主製作臭プンプンの映画。

「クドカン脚本」とか「中村獅童出演」くらいしか、
事前情報は持ちあわせていなかったので、
最初からあまり期待はしていなかったが、
始まってみると、これが想像してたより面白い。

武蔵大の友人がいるのだが、
彼らは大好きなんじゃないだろうか。
もう、とことんロック魂。
B'zやラルクはロックじゃねぇ、って感じの。
メジャーなんて糞だぜ!みたいな。

「ロックバンド」としてメジャーデビューし、
それなりのヒット曲も出したものの、
事務所やメンバーから売れ線を要求される現実と、
「本当のロックはこんなんじゃない!」と、
幻想の「ボブ・ディラン」の前で、苦悩する男が主人公。

宮藤官九郎脚本については今まで、
「話し言葉のテンポ感と、
 サブカル的な軽いノリで、
 キャーキャー言われてるだけでしょ?」
と遠巻きに眺めていたのだが、
少なくとも『アイデン&ティティ』は悪くない。
っていうか面白い。
すごいぜ、クドカン!

現実だか夢だかわからない雰囲気の中で
主人公の前に「ディラン」が現れ、
その言葉はハーモニカの演奏によって、
頭の中に直接語られる、という演出や、
役者達が実際にスタジオに入って練習したという、
バンド演奏シーンも迫力があって良かった。

最後のほうでちょっとダレたのは傷だけど、
田口トモロヲは初監督作品として、
素晴らしいものを作り上げたのではないだろうか?


・・・だが、
根本的な部分で、気になった点が一つ、
主人公のバンド「SPEED WAY」は、
最盛期でどれだけ人気があったのかが、
劇中ではあまり描写されていないので、
主人公の苦悩が、どの程度の切実感を
伴っているものなのか伝わってこない。

結局、そこの部分が曖昧なので、
ともすれば、アングラの底のほうから、
メジャーに対して悲痛に叫んでいるようにしか見えない。
自分は、B'zやラルクもスゴイと思っちゃう人間なんで。

やっぱり、
「話し言葉のテンポ感とサブカル的な軽いノリ」
だけなのかな、クドカン・・・。

なにはともあれ、レンタルで観るには
文句ない出来(雰囲気も含めて)の映画だと思います。

by tnkmr

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April 05, 2004

殺人の追憶(★★★☆)

ポン・ジュノ監督の韓国映画、「殺人の追憶」をシネマスクエアとうきゅうで見る。
非常に前評判が高い映画なのだが、いつだったかの「とくダネ!」で岩代太郎が音楽をやっているカラミで取り上げられていたこともあったのだろうか、ほぼ満席であった。シネスクっていつもガラガラなイメージがあるのだが・・・こんなのは「マルホランド・ドライブ」以来である。
昼ごろ起きてから何一つ食っておらず、空腹この上なかったため、西武新宿前のマックでベーコンレタスバーガーのコンビを買っておいたのだが、モギリ時に「場内では飲食できませんので、飲食の方はロビーでお願いします」といわれ、予告編の間ロビーで食べる。コーヒーも飲みきれなかったので泣く泣くトイレに流す。
ミニシアターはこれだからウザい。こちとら、デートでしっかりランチを仕込んで「じゃあディナー行く前に映画でも見る?」みたいなノリのカップルとは階級が違うのだ(一段下なのだ)。映画館は生活の場たるべきであり、観て、食って、映画がつまんない時には寝る場であるべきなのである!と声を大にして言いたい。

本題。
この映画は、80年代から90年代初頭にかけて、軍事政権化の韓国の田舎で実際に起こった未解決の連続強姦殺人事件「ファソン事件」を材にとったものだが、だからといって単なる社会派ドキュメンタリーなタッチではなく、事件を追う刑事たちのキャラクターがたっぷり描かれた、非常にストーリー性の高い映画になっている。
笑えるシーンも随所に折り込まれているが、これ見よがしなギャグではなく、キャラクターの味わいから自然と湧き出るユーモアになっているところが良い。また、こういう笑いを演じる時のソン・ガンホは実にイイ演技を見せる。銭湯のフロオケにつかりながら、人のチンコをじとーっと見るあの視線は忘れられない(←別にホモキャラなのではない。詳細は映画を見るべし)
あの顔のでかさが効いているのではないだろうか?渥美清効果と名付けたい。(そういえばもう一人の暴力刑事は、なんとなく見ていて郷瑛治を思い出してしまった)

ソン・ガンホが地元警察の「捜査は足だ」派、キム・サンギョンがソウル市警の分析型捜査官であることだったので、一種のバディ・ムービーなのかなぁと考えていたのだが、この映画はそういうハリウッド的な類型に堕しておらず、いい意味で裏切られた感じである。
と、いうか「オアシス」「殺人の追憶」とこのところ見継いできて、私の中の韓国映画への期待感はハリウッド映画への期待感などよりもずっと高いものになってきている。時に「ボイス」みたいなものを見せられることもあるが、映画を「映画ビジネス」などと呼称することに何の抵抗感もない不快なマーケティング野郎が寄ってたかって作り上げたであろう工業産品的臭気は、少なくともこれまで見てきた韓国映画からはあまり感じられないからだ。「ユリョン」や「火山高」みたいなものも、荒削りであってもすごく健全な勢いを感じるのだ。
しかも多面的な面白さが充満しており、見ていてすごく嬉しくなる。「映画って面白いなあ」とちゃんと思わせてくれるのだ。
あともうちょっといくと「韓国映画があれば、ハリウッドなんかいらねえや」と思えるほどになりそうな感じを、今日「殺人の追憶」を見て得ることができた。

さて、日本は・・・?
by k-tanaka

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